詩文

どこまでも行こう

どこまでも行こう、そこには、未踏の雪の幼さが笑っている、そこには、風と遊ぶ花の声が聞こえている、目を瞑って丁寧に身を溶かそう、ブランコでぐんぐん夕焼に近づいて眠りに結われていた、どこまでも行こう、どこまでも行こう、澱みのない直線を放つ曲線…

U

わたしはゆっくり言葉を並べてあなたに何か言いたいのだと思う。言葉が実働して行動そのものにわたしがなれるなら人に生まれてきてよかったと笑顔でそう言うに違いない。あなたはゆっくり大人になって大人の言葉を使っても尚はやくに受け止めてきた肌着を脱…

いのち

あさがた みていた 風景 の 中、ひとは 気配のふるまいをし 花 や 鳥 の なまえ を 知ることと、その なまえ を 呼ぶことが 生まれて 生きる いのち に なる。 ふたたび、みたび、触れあうたびに いつもの あさ に戻る 。風景 の 中、ひかりを交わす みなも …

せいひつな象

もう会えないものとの出会いが やさしい音ならば ことばも知らず言いあてられる いつもながれに浮かぶ意識をつまんで もて余している 時々、雨のように せいひつが象になるとして

ロックン・ロール

えらばないほう を 想像 する ような 途方もない たわいもない 眼差しを した じかん は 、午後 あかるさ と くらさ が つりあうほどの あめ の ふらない とおい 目、おとのしない ロックン・ロール が まち と キスする、映画を 観ていたい、

インザルーム

インザルーム インザルーム うつくしいものに、やかれてものが見えないなんて、なつの終りは、水面に出て、片付いていくの。すがたみ に うつる 保存する 有限 へ、別れでも告げるみたいにいとおしむのに、次の瞬間、笑っているよ。インザルーム インザルーム

オノツバサ第三詩集『オキシトシンスイミング』上梓

第三詩集を出版した。二〇一八年十一月二四日発行。七月堂。 タイトルは『オキシトシンスイミング』である。 前作から二年ぶりの詩集である。ぼくは二九歳になってしまった。もうすぐ三十だ。二十代三部作と呼ぶこともできる。なんだそりゃ。これから先、詩…

裁かれる

ことばで望み得るものは 自らが望んでいたものとは異なる。 けれど、ことばという現実は残る。 少なくとも。 無形のオブジェは 不思議な チカラで 自らの美を裁くだろう。

なんの生産性もないような日、天才的な閃きもない退屈な日、くだらない啓発によって、本性を歪めてしまいそうになったり、唯物史観に陥ったり、そして、すべてを面倒がってしまうこと。 一切を平たく言語化できるのにも関わらず、その一切の言葉にはセンスの…

ほとり

いちにんしょう は けしょう したり かくれが で しゃい な だんす おどる は しく れ じゅ う た い する しない ほ かと にてない かた ち たち の ち がい つまびらか に あとさき さ さ や き すいようせいの こうさて ん で あ っ た

トワイニング

花 と 花 と 花 ) (水 と 水 と 水 ツモリチサトを 着て harukanakamura を 聴いた 風 と 風 と 風 ) (あじさい の 汗 に 似た 物干し竿 ( 午後 かげり に ひと筋の におい を 通す もくめ の 床 優雅である 夕方になるまえ の アールグレイ (お話をした ひ…

うみわたり

めをつむるわたしたちうみわたりゆくえのしらないもくばのり ときのみえるつきのおとかげ わすれかたおもいだしてねむるまえのおぼえがきをすいている

盲目のスクリーン

点を つなぐ あやを 通す 線を 拾う 指を 結う 盲目の スクリーンに かざす 染みている 肌理へ 映しあう 波ま 充ちる 内まくの はしに

手放した いとおしい残り香をたずさえて 見馴れた景色を蹴る 融解や気化の現象に棲んでいるかなしみの一種のつらなりが ゆらゆら 通うひかりの出口を手わたす上り下りの舟人のやすらいをずっと以前から探している

なにもない

なにもない、きれいな、なにもない花が、なにもない、時を刺す、指、なにもない、筆洗の、なにもない硝子は、なにもない、漂い、なにもない、ブランコが、なにもなく揺れる、なにもない空中で、なにもない夕焼けの、なにもない祝福は、なにもなく通過する、…

アイスクリーム

アイスクリームの砂漠を歩く。はじめまして。足跡が続いている。ひと肌の空気に吸われた時間。空とぶ猫は鳥になれない。灼けた青がら旋する。軽くなるため記憶を棄てた。ハロー。紅茶に星を降らせる。カーテンを着ていた。コップ一杯の水を探している。生存…

脳が危ない

発泡スチロールのハイボール 脳フラワーラバーなハレルヤ モッズにてレトロな十九世紀 そらをとぶ猫、鳥になれない 夕方カルピス無垢材タピオカ ぶたおっぱい、おっぱじまる

イコール

好きです。とは、すべてを失えますよ。とひとしく、それが生きる理由になる日には、死んでもよい。とひとしい。

ジューンポート

モノローグが風景になる む音はことばになる まなうらにねつが灯る イメージをたしなむ 六月は溶けていく あけがたにつながる 伏し目がちなつきひ 口笛をふいて 風のいろをなぜれば ひきあうだろう

6.12

花のゆらめきは 挿し色に燃える季節に触る。音のかたちをはかるように 円い匣の中をさまよっている。匂いに沿って着崩した服が反目にあい 行き場を求める筆致を覗くと、中性的な和音はしめやかに青白い恋をしている。

宴のあと

おなかを空かせていないと ありつけない ねこ と 話す ほんとうのこと 孤島 に いて 星 をうつす ねむり の 中 に 保存 する 時間 を 意訳 する 宴 の あと 洗われていく 単一 の 光 について さまざまな 角度 へ 離散 する ひとつに 名まえ を つける

駄作a

雨のなかを通った 道の切れはしには つづいていく標識があらわれ うすらぎが寝そべる湿度のにおいと 電柱がアルペジオする 鈍色の午後、 歯医者の待ち合いの水槽 単調な秒針の音、 さっき飲んだ紅茶の渋みが つめたい舌に残っている

オノツバサの詩の思想

概念のマトリクス、造語というのも、いつか新たな概念として固定化する。そして、それは概念の絵になる。 ぼくは、そんな詩へのアプローチを続けてきた。とくに、出来合いの難しい言葉というのを極力避ける。 不必要に難しい熟語、具体化されたレイヤーにあ…

脱衣場

まひる の 背なか に 眠る おさない木洩れ日、一切は、浴室 の息つぎ の 先、疎通する、こめかみ 濯いで、手放せる ことにこそ、伏し目がち な、あかるい、空 の へり に 触れる

ただ、今を癒える場所

名前もないだれもわたしを知らないところ。わたしはなにも知らないまま夢を見ながら死んでしまう。それはもうここにはなくて、似たようなものは、いまもたくさん存在する。誰もがただ、今を癒える場所、折り目をつける。

羽 が うすい、それでもとべるね 子守唄 の においのする 手紙をかく 旅 に でる 名のしらない花の名を しるまでのあいだ の名をつける うた を とおくまでつづけるほどちかくきこえるように

アレコレト

カップに残る珈琲半分くらいこれはつまり冷めてしまっていてそれをなくすためにとてもゆっくり費やしていくものがたりの一角に根を下ろせないままたくさんの途上を忘れていくなりかけのかたちが華やいで窄んでいって季節を運ぶもう何度目か数えるのもやめて…

河川敷き

沈んだ日をとり戻しに出かけた帰りに、口ぐせがきみになるから、河川敷きで都会の喉にもたれる列をずっと見ていた。草のにおいのする耳なりがビートミュージックをループさせ高架下からビビッドなリトグラフが見えてくる。さいごに思い出したのは信号の青色…

マイナス三角形

重力をひっくり返すと宙になる。深夜二時、天からマイナス三角形を告げられる。砂時計の保存則は、情と論理の確執をうたう。会いたいとすれ違いは同伴して、浸して梳いた吐息は透けた声になる。漣の描写で音に火が点き、ぼくらは小気味よく並べて丁寧に数え…

kind of white

まっしろ な まっしろ な くらやみ は あかるい あかるい ひとつ の こきゅう。かくめいぜんや は そら を とぶ。いつか を かすめてきた におい。わたし きれい な けつえき に なる。わたし きれい な けつえき に なる。はるか はしる。きこえて むね か…

著者