セピア爺さん

セピア爺さん、夢を渡るよ。シャッターの下町、低い空に電線垂れる。自転車こいでいる。ゆっくりと。買い物女の子、おかあさん手をひいて、あやとりみたいにあやしてね。セピア爺さん、惣菜屋の夕方、恋みたいな空、犬が気持ちよさそうに散歩して、ああ、しあわせだな、伸びていく道と影、セピア爺さん、ぼくこの街でいちばん、ハーモニカ吹くのうまいんだよ、少年の景色は一生物だ、あとは、epilogueかも知れない。けれど、風前の灯火の夕焼けの橙、橙、橙、最後にひとつだけ、セピア爺さん、暦の上では秋だって、そう言われると、秋が近づいて、夏はもっと切なくて、あの雲の切れ目、陽が沈んだら、世界が終わるんだ

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