神秘家

誰しも悲劇がいちばん神秘に近い。けれど、神秘はいちばん日常から遠い。だから、日々は理想に反して退屈だ。ぼくは、ぼくを指示しないものを、薄々理解している。おしなべて、彼らは日常の生き物だ。ぼくの神秘主義は、支離滅裂で失笑を買う。恋愛は、辛く、辛いから悲劇で、悲劇は美しい。たとえば、不条理はそんなことだ。決して、バカみたいな、ニーチェの哲学なぞ読む必要はない。結婚。それは、いちばん日常に近い。だから、いちばん退屈で、合理主義者は、「しあわせ」と呼ぶ。ぼくはそれを半分は認める。しあわせな人は少ないが、しあわせそうにしている人は多い。もう半分の強い自意識によって、かわいそうなぼくは、人が言うところの「ふしあわせ」をまとっている。ぼくは、それをあからさまにすることに、なんのためらいもない。

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