もし、ぼくらが春そのものになれたなら

二月が終わる。空気の匂いが色めきだしたのは花粉のしわざ。乳色の雲が淡い青に寄り添い、鳥たちに春が近いことを教えると、さえずりは希望のシグナルに換わる。実利のガーターに視界を落とした人たちも、大きな欠伸やくしゃみをしながらいつになく笑いあい浮かんでいる。花粉症の人たちはずっと熱っぽくうなされていて、終始なにかを恨んでいるけれど、結局いつも恨みきれやしない。ぼくらは冬を振りほどく歓びと僅かな寂しさをまだ冷たい空気に触れて感じている。春の序曲が過ぎて、大気のわだかまりが抜ける時、草木はいっせいに芽吹いて香り、そして終曲、桜は舞い散る。これからの凡そひと月、季節はさっそうと駆け抜けていく。あっという間の出来事。

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