アイネクライネ

身よりは、途方に暮れたあとのほんのわずかな憧憬。


まだ、見たことも聞いたこともないのに知っていること、腑に落ちて、眠ります。夢のなかの論理の鬼は癇癪を起こして回転しています。ぼくたちは、その回転を遠巻きに、出口のないことの怖さを知りました。


終わることを、密やかに、尚、強く願いながら、もし、終わることが許されないならば、身よりを大切に暮らしていきたいと思うのでした。

そこは、地平線が遥か彼方まで続いていて、煤けた靄がかかっています。暫く歩くと、うっすら鉄塔が見えてきて、「世界の終わりはどこですか?」と尋ねると、途端に土砂降りになって、いちめん、灰色の排水溝になるのです。ぼくたちは世界の終わりに触れて、その怖さを思い知り、尻込みしてしまい、望んでいたはずの、「終わること」さえ挫折してしまったのです。

ぼくたちには、居場所がありませんでした。そこかしこ、無数の他者が、何の言われも知らず、押したり引いたりしていて、ぼくたちはたぶん、少し悲しそうにその波打ち際をしばらくのあいだじっと眺めていたのでした。


「もうぼくたちには居場所がないけれど、ぼくはきみのなかに棲んでいて、きみはぼくのなかに棲んでいるなら、そうやって、ぼくたちがぼくたち自身に潜ったところに、実はほんとうの居場所があるかもしれないね?」


ふたつの黒い染みのついたキャンバスは、レディメイドの処女を捨てて、新しい価値のなかに身を投げていきました。

著者