前髪

前髪は世間の重力の防波堤です。


ここからこちらの側は、かたくなに守ります。


けれど、たとえばビニール傘をはじく雨音は何処か密やかな喜びに似ていて、こちらの側にあるんです。


人間は実にうるさいですね。


日々、ぼくらは自分のなかの小さな裏切りを続けてしまう。


なけなしの慰めを除いて。

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