春のスピード

ガラスを割るようにピアノが弾けたら、喉の支えが剥がれて、時を吸えそうな空でした。春のスピードが抜けて、人より早い過去を浴びたあと、雨のまちぶせに流離うのでした。アンニュイだけが、次の音の美しさを見いだせるのを知っているので、近づく巨きな静けさに、まあるくまあるく耽っていました。

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