欲しいものたくさんあるよ

物欲はない方だと思っていた。家はボロくて良いし、車は要らないし、テレビも要らない。でも、ぼくは磨き甲斐のある革靴が欲しいんだ。ブラウンのローファー。ダークローズのビジネスシューズ。それから、履き心地のよい靴下。控えめな柄の良い生地のネクタイ。スタイリッシュなチェスターコート。座り心地のよい品のあるソファ。暖色系の照明。快眠できる敷き布団。丈夫な自転車。いまここに、100万円あればすべて手に入る。なのに、ここでいま仮に全部手に入ったら、もったいないとさえ思う。それが手に入らないなかで、欲しいという夢が、現物のそれらより何倍も豊かだと思ったりする。週末に伊勢丹かどこかでウインドウショッピングでもしたい。ぼくは飯以外に夢を食っている。ボロい家でボロい靴を磨いている。思いのほか、幸せなのかと思う。そんなことを語り合うひとがそばにいれば。

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