十年

十年前のこの季節、ぼくは実にたくさんの曲を作り、ライブハウスやバーなどで唄い始めていた。学生運動から足を洗いようやく前向きに創作を志した。当時は、シンガーソングライターになろうと思っていた。各地で演った。のちに、自分の呼称を「詩人」に変えるが、やっていることはおんなじだった。モチーフや向き合い方も同じでアプローチの仕方だけが異なるだけなのである。振り返る折、十年というのがこんなに小さく収まるものなのかと愕然としながら、変わったことと変わらないことの一つ一つを整理すると散らかる一方で、そう、決して小さく収まりなどしないのです。

人間、冬眠ができないようにできていると思っていた。勿論、それは半分合っている。だけど、思考とか気持ちなどはたやすく冬眠されてしまうものだと思う。季節の移ろいに埋没してしまうものなのだ。

目覚めることが出来るか。出来ないか。それがその人物のチカラというものだ。

なにか大切なものが凍結されたままになっているような気がするのだけど、それがなんなのか思い出すことが出来ない。

時々、それを一部でも思い出したりして、それがぼくの詩になり音楽となる。

 

著者